古惚けた朝/仲本いすら
 
綺麗に泣いているけれど

すべてを美化してしまわないように
タイトルはまだ付けないようにしている

それを君は
逃げだというが

それもすでに物語の最中であることを、

*

起立、気をつけ、礼が続いてゆき
僕らの夢は触れられるほどになったけれど
それだけ涙を流す量は
増えてしまっていて

* ***

がらんとした教室に
蛍光灯の突き刺す灯りと
草臥れたフロアワックスのかおりが広がっている
そこから産まれたデジャビューに
うなだれながら
黒板の真ん中に
ただ一言だけ、遺してゆく

* ****

さよならは、言わない。

* ****
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