光と水、林檎/下門鮎子
ぼくはまた、
何も生せなくて水を求めるばかりか。
水をください、舟を洗うから ぼくが
飲むのではありません。ぼくは
ほとんど飲まない。
砂漠で生まれたからです。
うそ
うそです、ぼくはたくさん飲む
でも舟も洗いたいし 虹も見たい
水のレンズの向こう
分けられ集められた光の
声がきこえる、
光の産声。休みなく
光をほとばしらせて笑いながら
水をくぐって虹になる子ら。
ぼくより水のほしい人がいます。
さびしい子の家に いやというほ
ど水を飲んで水になったぼくが降
りていく すると光は分かり 集
まり 虹へといざなわれるんだ。
だから、水をたくさん――
林檎が生っている、
ぼくの無力を包んで
甘く充実して。
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