挙動不審者/hon
うべのことが徐々に思い起こされた。大きな恐ろしい怪物が窓の外にいた。あのゆうべ見た全ては、夢だったのだろうか。
なんとか立ち上がって、窓枠を確かめてみたが、これといった不審者の痕跡はなかった。家の前にも誰もいないようだ。
不審者の存在が夢であったなら、それにこしたことはない。しかし、よく思い返してみても、あの出来事が夢であったとも、なかったとも、どちらにも断言は出来ない感じなのである。
もし、夢でなかったとしたら、どうする。あいつが大きな図体に似合わず慎重派で、昨夜の行動は様子見、すなわち哨戒活動であり、本格的に踏み込んでくる次の行動をもくろんでいるとしたら。
といって、寝起きの頭で考えても、何も思いつかなかった。眠い。まだ頭がぼんやりしている。
「起きなくちゃ、起きなくちゃ」
口ずさみながら、私は階段を降りていった。(了)
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