素晴らしき鈍感/深月アヤ
 
    
そこに立っていてはいけない
  だってね
  そこは通路なんだから


満月の夜
ぽっかりあいた空の穴へと
長い階段を登る
有象無象の影

水面に映る月は
堕落した命を吸い込む


ひと

ヒト




どこかの女社長は
ドレスの裾を引きずって
地に着く足など無いご様子


交差点では
実に何本もの足が
歩道の上を通り過ぎる


遠の昔に
そこからはみ出した2本の足は
噴水の前で交互にユラユラ

   
   {引用=そこに立っているとね
  通り抜ける魂どもに
  少しずつ侵されて
  知らず遠くへ流さ
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