ながれ ちかく/木立 悟
水から聞こえくる声に
応えつづけて日は暮れる
滴のなかの千年に泣き
魂と物をくりかえし
小さなうたをうらがえす
翳りの坂をのぼる火の葉
夜明けと午後は
混じることなく重なりあい
ふたたびそのままに離れてゆく
新たな翳りを残しもせずに
こぼれ落ちる羽
水に水辺に
映るだけの羽
音を沈ませ
短い波が
陰をわたりきり
飛び去る姿も
やがて沈む
望みの色は折りたたまれて
他の色たちのつらなりに
深く深くしまわれてゆく
羽に生まれる羽の羽
空へ空へとどくたかまり
水のなかの夜にたたずみ
火の空 雪の地を胸に
静かに静かにかがやいている
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