スタンダール症候群/藤原有絵
真夜中に沈んでいく終電で
疲労をぶら下げた男たちが吐く息で
今日何度目かのめまいに襲われる
脆弱なんだ
きっと他意はないその言葉に
ぎっ と
音がなるほど唇を噛んでしまったのは
詰まるところ自覚があるからで
それは他人の目に映るほど明白であった事
取り繕う虚しさを投げ出して
私は一度 唾を飲み込んだ
後頭部にはスイッチがあって
冷たい鉄の柵に頭を乗せると
止めどなく涙が流れてしまう
最近は泣き方が異様に静かで
それは恋人が帰ってくるまで治まらず
大きな手で柵から頭を引き抜かれると
滞っていた血流が
とろりと緩慢に流れはじめるのを感じた
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