ほしおりの、そのときに/たりぽん(大理 奔)
 
GEKKO(注:白黒写真印画紙「月光」)に浮かび上がる
曖昧な輝度信号
ほしおり はすぐそこに迫っていた
切り取られた夜空を
暗室の赤い光に積もらせ
あまりにも遠すぎて
おぼえきれない思い出を
つなぎとめる
細切れにして

恒星との別れは
突然ではないから
さびしい
地平がかすんでいると
なおつらくなる
だからレンズは
できるだけ天頂へと向けて
僕は涙をこらえるんだ

赤道儀は占い師のように
生まれも運命も探り当て
屈折鏡はみたいものだけを
うつくしく、きれいなだけ
焼き付ける
欲しい思い出だけ
つなぎ止めるように
切り取って

予言の通り
ほしおり がはじまる
時が止まっているようだ
君は星を見ている
とおいとおいひかりを見ている
僕は瞳をみる
君の目に映る、とおいとおい

だからレンズは
できるだけ
、僕は
涙をこらえる




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