初春風/松本 卓也
 
脳裏に浮かぶどの言葉も
君に捧げるには陳腐すぎる

川上の方から流れてくる
灰色に濁った川でさえ
海に至る長い過程の中で
澄んだ我が身を取り戻すだろうけど

暖冬に吹く柔らかな風が
言葉を彼方に届けるまでに
どれだけ澄んだ音色を纏うのだろう

一度だけでも君になってみたい
発した言葉がどんな風に響き
君の中で何色に昇華されるのか

キャンバスに撒き散らした絵の具
空に載せて吹かせてみれば
僕よりも素直に想いを描くから

果ての先で眠る君の
優しい夢に抱かれていたいのに

何よりも隔てる現実こそ
誰よりも遠い証でしかない事を
思い知らされるばかりだ
[次のページ]
戻る   Point(2)