初春風/松本 卓也
脳裏に浮かぶどの言葉も
君に捧げるには陳腐すぎる
川上の方から流れてくる
灰色に濁った川でさえ
海に至る長い過程の中で
澄んだ我が身を取り戻すだろうけど
暖冬に吹く柔らかな風が
言葉を彼方に届けるまでに
どれだけ澄んだ音色を纏うのだろう
一度だけでも君になってみたい
発した言葉がどんな風に響き
君の中で何色に昇華されるのか
キャンバスに撒き散らした絵の具
空に載せて吹かせてみれば
僕よりも素直に想いを描くから
果ての先で眠る君の
優しい夢に抱かれていたいのに
何よりも隔てる現実こそ
誰よりも遠い証でしかない事を
思い知らされるばかりだ
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