蒼い微光/前田ふむふむ
 
されたひかりを立ち上げて、
  新しい八月には、たゆたう枯れない草原を広げる。
  わかい八月には、約束の灯る静脈のなかに、
  あの幼い日に夢で見た美しい船が、
  今日も旅立ってゆく。

     5

忘れないでおこう。
たいせつなものを失った夜は、
なぜか空気が浄らかに見える。
世界が涙で、立ち上がっているからだろう。
走りぬける蒼い微光のなかを、
立ち止まってゆく、
忘れていた悔恨の草々。
静かに原色が耳に呟く。
「言葉は聞こえるときにだけ、いつまでもそこにある。」

鳥篭のなかの啞のうぐいすが、
          激しく鳴いた。








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