蒼い微光/前田ふむふむ
 
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うすい意識のなかで、
記憶の繊毛を流れる、
赤く染まる湾曲した河が、
身篭った豊満な魚の群を頬張り、
大らかな流れは、血栓をおこす。
かたわらの言葉を持たない喪服の街は、
氾濫をおこして、
水位を頸の高さまで、引きあげる。

これで、歪んだ身体を見せ合うことはない。
徐々に、溶解してゆく、
水脈を打つ柩のからくりを知ることはないだろう。
唯、あなたに話し、見つめあうことが、
わたしには、できれば良いのかもしれない。

見えない高く晴れわたる空を、
視線のおくで掴み、仄暗い部屋の片隅で、
両腕で足を組みながら、
そう思う。

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