鍵/暗闇れもん
 
家に鍵をかけなくなった

怖いものがなくなったのか
もう失うものが何もないのか

祖母は離れの鍵を閉めなくなった

あれほど何かに怯え
家族にさえも恐怖に感じ
この地上のどこにも安全は存在しないかのように
締め切ったドアの向こうでこっそりと外をうかがっていたのに

あの頑丈にしまっていた扉はぽっかりと口を開けていた

もうこの世界に繋ぎ止めるものは何もないのか
連れて行ってと
あいた空間はそう叫んでいるようだった



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