瞳/松本 卓也
夢が舞う歩道橋の上で
東に浮かんだ夕陽を眺めていた
崩れた表情を整えながら
笑う君の残像に目を奪われて
僕はただあざ笑うばかり
まるで閃光の中に消え去った事実のように
記憶の錆付いた青臭い台詞が口の端から漏れる
其処には何一つ本当の事などないはずなのに
なぜかしら脚をそむける事さえできないで居る
駆け上がれば空に押しつぶされ
跪けば臓器の軋む音色に今日の歌を奏でる
悲劇が喜劇となってリンパ管を駆け巡ると
不自然な哀れみだけが世界を満たす
どうしても真実など知りたくないから
誰しもが虚構の幸福に我が身を捧げるのだ
だのに
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