旅人の探し物/紅柳みつば
ある日
自分の知らないものを
知るために
旅に出ようと
試みた少年は
持って行くものを
選ぶのに三日かかった
三日後
大きなリュックと
大好きな本を片手に
少年は一人
列車に乗った
初めて乗る列車や
本で読んだような
知らない街
全てが少年の心を踊らせた
来る日も
来る日も
街を歩き渡り
新しいものに感動し
夜はその日見たものを
浮かべながら
星と一緒に眠りについた
そうして
旅を続けた少年は
気付けば
幾つも年をとっていた
大きく膨らんだ
リュックの中身は
ボールペンと
本だけになっていた
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