花の精/冲克。
 
流れ静かな日野川の堤に沈む太陽を丸く小さき背に受けて魚を追いし幼子は
遠き昔の君だった

いつも静かな吉川の闇に響く笛だいこ
こよいは社の祭りとて、若き母をせかせしは魚を追いし君なのに
今は、娘に様変わり

日野の流れは、変わらねどもいつしか乙女と育つうち、
花の香りを漂わす花の精となっていた。

騒音多き逢坂の難波のビルのその中で心せわしく働くは、
遠く離れた雪国の日野の流れに里を持つ、まだ汚れ無き花の精

嗚呼、何故に、花の精を恋すと人は問う、花に憧れゆく若者の慕うが故に慕うなり

魔法にかかった若者からは、花の精としか見えない魔法、解くすべもなし、これが初恋



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