「北風が吹いている」 (青年詩片)/ベンジャミン
 


「西高東低の気圧配置はしばらく続くでしょう」と
天気予報のお姉さんが
カメラ目線でうったえている

僕はコートを羽織って
襟のホックを上手くかけられないまま
仕事へ行こうと玄関へ向かう


北風が吹いている

扉がなかなか開いてくれないのは
外側の圧力と内側の圧力が
対立しているからだ

もしかしたら僕は
試されているのかもしれない


北風が吹いている

葉を落とした木々を揺らし
関東平野を駆け抜けて
何処かで追い風だったそれが
今は向かい風になっている

なかなか開かない扉の向こうで
無駄に流れる時間が後退している


北風が吹いている

寒さとは違う何かが
僕を押しとどめようとしても
現実に吹く風は
常に扉の向こうにあるのだと


北風が吹いている

だからこそ僕は
この扉を開けなければならない



      
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