「北風が吹いている」 (青年詩片)/ベンジャミン
「西高東低の気圧配置はしばらく続くでしょう」と
天気予報のお姉さんが
カメラ目線でうったえている
僕はコートを羽織って
襟のホックを上手くかけられないまま
仕事へ行こうと玄関へ向かう
北風が吹いている
扉がなかなか開いてくれないのは
外側の圧力と内側の圧力が
対立しているからだ
もしかしたら僕は
試されているのかもしれない
北風が吹いている
葉を落とした木々を揺らし
関東平野を駆け抜けて
何処かで追い風だったそれが
今は向かい風になっている
なかなか開かない扉の向こうで
無駄に流れる時間が後退している
北風が吹いている
寒さとは違う何かが
僕を押しとどめようとしても
現実に吹く風は
常に扉の向こうにあるのだと
北風が吹いている
だからこそ僕は
この扉を開けなければならない
戻る 編 削 Point(9)