鬼の園 〜サイレント〜/こしごえ
 

門をとおるのは青やかに透けた光のみ
「私」が私をむさぼる
見果てぬ大空のもと
内にある冷たいせせらぎを見返すと
果てしない流れを映した
音色が(言葉なく)澄んで(ささやき)さかのぼっていった
ひとすじの煙が
青ざめた灰色の雲となって
ゆらぎのない瞳の星を
瞬かせる
音律は白銀をしている月影
いつの間にか夜の呼吸を
みちてはかけ かけてはみち
くりかえし むさぼる
生ぬるい赤い海は舌にねっとりとからまり
黒いドレスをじっとりとけがして
恍惚とした夜へ沈んでいく形相(ぎょうそう)
そのようすを
うずくまっていた蛇が冷たく見つめていた
どこまでも私を静まっていきながら
一輪挿しに白い花が(ひっそりと微笑んでいる









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