鬼の園 〜サイレント〜/こしごえ
 
胎動している不在の影が
失われた地平線となって
私を回帰線で立ち尽くしている)
影がずれて
光が砕けて群生していた

三十七度強の熱帯の白日夢で
黒いドレスの少女が祈っている
その瞳は
黒く透けていて底はなくゆらぎもせず
願いをくりかえし放っているかのよう

かげもかたちもなくなった街は
希望を得ることはできずに
太陽に焼かれて陽炎に沈んでいる

老人の杖は折れて
虚無的な嘔吐は青くしびれ
終末の交配は涙を産んでいる

丘の上の大樹のかたわら
黒いドレスが無風にしめり
凪いでいる
青空に小鳥のさえずりもなく
ただ悲愴が天を突き
らぁらぁと静まってい
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