雨から、街を/霜天
蓋の閉まった街の水嵩が誰にも知られずに増していく
なんという、静けさ
塞ぎ込む窓辺に君は寄り添って、透き通る視線で景色を
混ぜるように空を、抱えている
明るく、楽しく
昨日のことを語れる場所は意外といろんな場所にあって
視線を戻さずに、誘われる景色から
明日に近いところに
降り積もる雨があって
ひとつを
抱えたまま飛び越えていくことが
いつだって難しく思えて
雨の中に沈めば戻れない気がするのは
この中に人が、きっとたくさん溶けているから
雨から、街を
少しだけ掬い出すと
震える声が微かに響いて
後には何も残らない
語らない、静けさ
溢れない水辺の
君は変わらずにそこにいて
明日の近くに寄り添っている
戻る 編 削 Point(6)