雪の子守歌/佐羽美乃利
 
疲れた人よ

今は静かに窓辺の椅子にもたれ
瞼を閉じて

雪の花片が奏でる歌を
聴きたまえ


懸命に生きて
なお悔いと苛立ちに
さいなまれる人よ

この星の底まで降りて
すべてを忘れ
眠りたまえ


弱々しく怯えたまま
儚く消えてゆこうとする人よ

あしたは
きっぱりと美しい棘を持つ
真紅の薔薇として
眼を覚ませ


誠実ゆえに
傷つき倒れかけた人よ

永遠から永遠へと
絶え間なく
生命の糸を紡いでいる
見えざる掌に包まれて

この冷たく白い夜に
清められた心音を
透きとおる風の旋律を

聴きたまえ








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