不完全な一日/なかがわひろか
今日もまた一日を不完全に過ごす
なにも完成せず通り過ぎるだけの
長い一日
昨日あの娘は一日を完成して
嬉しいよお、嬉しいよお
と云って
何も残さず死んでしまった
彼女はきっと安心したんだろう
空しいよお、空っぽだよお
彼女は毎日こう云っていた
彼女はきっと満たされたろう
彼女はきっと笑っていたろう
彼女の声が頭を響く
なんだよお
なんだよお
あたしは完全なんだよお
あたしはなんにも
悪かないよお
彼女は本当は悲しかったろう
彼女は本当は
泣いていたろう
彼女の声を唱えながら
彼女の声を唱えながら
僕はまだ不完全な一日を繰り返す
(「不完全な一日」)
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