瑪瑙の牡鹿/蒸発王
 

海を見つめるような

瑪瑙(めのう)の谷だった


崩れ落ちている
瑪瑙の破片を口に含むと
いつもの甘い味がした

掌に冷たさを感じて見れば
腕の中で牡鹿が泣いていた
抱きしめて
舌で涙をぬぐう


お前の涙も
私の右目の涙も
瑪瑙(めのう)と同じ
甘美な味だね

ああ
ごめんね

瑪瑙(めのう)に
帰りたかったんだね





おかえり





『瑪瑙の牡鹿』

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