瑪瑙の牡鹿/
蒸発王
海を見つめるような
瑪瑙(めのう)の谷だった
崩れ落ちている
瑪瑙の破片を口に含むと
いつもの甘い味がした
掌に冷たさを感じて見れば
腕の中で牡鹿が泣いていた
抱きしめて
舌で涙をぬぐう
お前の涙も
私の右目の涙も
瑪瑙(めのう)と同じ
甘美な味だね
ああ
ごめんね
瑪瑙(めのう)に
帰りたかったんだね
おかえり
『瑪瑙の牡鹿』
戻る
編
削
Point
(8)