モップ/ゼッケン
きみを許す
なぜならおれは寛大な市長でありカーニバルの王だからだ
きみを指差したおれの口の端から涎のすじが垂れた
巨大な乳房と割れた腹筋を持つ黒人の看護婦がおれの涎を吸い
太く長い舌をおれの半開きの口に差し込んで言う
運命はいつもすてきね、ミスター
まったくだ!
ふたたびおれを乗せたリムジンは
朝のリオデジャネイロを目指して走り出す
きみはモップの長い柄にもたれかかるようにして
遠ざかるリムジンを見送る
またしてもすこし後味のわるくなったきみの人生に
きみは肩をすくめてみせる
肩をすくめてみせる以外に
こういうときはすることがないことを
きみは若いくせにとっくに知っている
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