恋人よ/嘉野千尋
 
  君を愛する
  と告げるとき
  その言葉にわずかに
  哀願の響きが混じった



  それを嫌ってか
  いつからかその言葉を
  告げなくなった恋人に
  それでも愛していると告げれば
  その言葉に悲しみが混じる



  つないだ手の、
  埋められぬわずかな隙間に
  心をさまよわせて 
  別れの朝に、
  抱きしめあうふたりがいる



  わたしたちは
  同じように愛し合ったはずなのに
  わたしの愛は足りなかったのか
  恋人よ

  


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