朝の手紙/なかがわひろか
世辞を御云いになる貴方の口先には
吐いて捨てるほどの口唇が群がる
郵便受けに貯まった手紙には
貴方の本音の言葉が陳列す
嗚呼僕はこうでありたい訳ではないのだ
と
然れど正夢の己は決して間違いではない
と
朝に生きる花の雫に反映し
波立たせる本来の鼓動の振動に触れ
貴方は嬉しいでしょうか
貴方は悲しいでしょうか
そう思うだけの日々を私は連れるのです
嗚呼貴方は不都合だと仰いますか
嗚呼其れを冗談とお取りになりますか
手紙に滲む貴方の涙の跡に
手紙の向こうにいる貴方を思うのです
然れどそれは本望ですか
それとももう見つけてしまった答えですか
朝露に湿る手紙を握り
私は問うばかりです
(「朝の手紙」)
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