罪人/なかがわひろか
 
一人の罪人とすれ違う
一つでいいから
俺の罪を背負ってくれ
心清き青年は
一つくらいならと受け取った

二人目の罪人と出会う
もう一つくらい背負っても大して変わりはないよ
青年は少し迷ったが
確かに一つも二つもそう変わらないと思い
受け取った

青年は二つの罪を背負って道を歩く

向こうから死にかけの老婆がやってくる
金を
食料を
水を
嘆く老婆はどこまでもついてくる
もう死にかけというのに
青年は優しさの一部だと自分を慰めて
石を掴んで老婆を殴り殺した
もうお金もいらない
食料も
水もいらない

青年
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