春の一歩/草野春心
完璧な春の下を
僕らはゆっくり歩いている
見慣れたはずの駅が今
妙によそよそしく見える
空は青くて風も澄んでいて
光もくっきり射している
でも僕の体の中はぐちゃぐちゃで
たくさんの言葉が混じりあっている
君にはそれが見えるかな?
そう、君もやっぱり綺麗で
僕は今でも君を好きで
君もやっぱり僕を好きで
春が僕らを優しく引き離してゆく
その手のひらはちょっとゴツくて
けれどもちょっぴり温かくて
だからこれはきっと良い事なんだと
繰り返し呟いたのは昨夜も同じ
改札を抜
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