と、彼女は言葉を継いだ/虹村 凌
そうだ
そう云うと彼女は乳房に埋もれていた私を引き剥がし
ピシャッと
私の目の前でテトラポットから飛び降りたのだ
海の中で泡になってしまった彼女にかける言葉を持たない私は
恐ろしい疑念や猜疑心で一杯になってしまい
彼女が残したスカーフにカフスボタンを包んで
そっと海に浮かべるのが精一杯だった
もう二度と彼女に質問しようとはしない
そしてそのままそんな事は忘れてもいいから
子供を呼び寄せようと決心して
私は防波堤の向こう側に歩いていった
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