君に会いに行く/草野春心
灰色のゴム長靴が
水溜りの道を一歩ずつ
飛沫をあげながら一歩ずつ
いつのまにか雨上がりの
中途半端な空を中途半端に見上げる
待ち焦がれた土曜日の朝を
息をはずませて一歩ずつ
明日はただ呑気に寝ている
かまわずに僕たちは早歩き
でっち上げた恋のなかでデタラメな未来予想
言葉と心を往復しながら傷つけあう
ゲームを繰り返しただけで悟った気になる
理性とかいう高尚な発明を捨てて
いくつもの明日を起こしに行く
今日の息の根を止めに行く
ナイフもピストルもいらない
ただ君の手を捕まえるだけ
ただ君の顔を見つめるだけ
そして猫みたいに眠るだけ
嘘も本当も逃がさない
君に会いに行く
待ち焦がれた最高の時へ一歩ずつ
戻る 編 削 Point(2)