それとも指輪の刻印で/たりぽん(大理 奔)
走ることは
ほんのすこし
歩くより早いだけで
大地に触れる回数は
結局少なくなってしまう
走るということは
触れないということか
月はやっぱり見えなくなる
世界から消えようとすると
自分が消えてしまうから
ゆっくりとまぶたを閉じて
世界を消してしまうと
僕は見えなくなる
封印はやさしかった
約束だけが書かれた薄紙が
通り道をふさいで
向こう側を消してしまうと
僕はやっぱり
道端で封印している
小さな四つ足の死骸は
世界から消えようとはしない
消えないことで
きっと世界に関わって
誰かをみていたいけど
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