読まれない書き置き/砂木
いえでします
と書き付けて机に置いた
小学校に とりあえず向かう
誰に叱られてだったか
何故か知っていた 家出というものを
はじめて決行した 小学一年生の時
きょろきょろみた 玄関で
ばあちゃんは台所で洗い物
お昼のご飯を食べて それからのことで
父母にも弟にもみつからない
今だ と 走った
幼稚園の時から通いなれた通学路
でも ひとりは はじめてで
近所のお姉さん方に連れて行って貰ってたから
ひとりで走る 夏休みのお昼時は
蝉の声まで 一段と たかく感じた
最初の十字路で はやくも立ち止まった
幼い不機嫌にまかせて でてきた
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