ニカラグア競争男/カンチェルスキス
 



 
 まるで八百屋から飛び出してきたような見事な赤い帽子をかぶり、
 可能な限りじじいに近いボーダライン
 ぎりぎりのおっさんは黒の長靴を回転させ、
 操るのは、カゴの潰れた自転車。
 そのスピードは、成人男性の歩く平均的なスピードを
 超えることができない。
 ちょっと気を許すとあっけなく抜いてしまうから
 今日のおれはチョロQの原理で歩かなかった、つまり、
 10円玉を脇の下に挟まずに歩いたってこと。
 成人男性がしゃぶしゃぶをポン酢で楽しむのと
 同じくらいの平均的なスピードを用いた。
 そしてそれは風景が蛇腹に見えてしまう瞬間
 おっさんの後輪ぐらいに
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