影/はじめ
 
 万古不易の眠りに就きたい
 テーブルの上には冷蔵庫に入れ忘れたプリンが置いてある
 闇が僕の家へと流れ込んでくる
 眠りを誘うつもりだろうか
 居間の真ん中で闇は渦を巻いている
 僕はそれに吸い込まれそうになる
 僕の心臓はそれに吸い込まれそうになる
 心臓が渦の動きに合わせて鼓動する
 その瞬間僕はいなくなる
 僕は渦を見ている
 置物の時計の縁が光っている
 僕の脳は渦に重なり 動きに合わせて思考している
 僕は空を飛んでいる 鳥も通わぬ上を目指して
 いつの間にか雲の上へと来ていた
 僕は歩いていくと僕の影が横たわっていた
 僕は影をそっと抱き起こし きつく抱
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