冬は、しかし失われ/soft_machine
 
冬は、しろく息が砕け
朝を浴びて目の前をただよっている
今どこかで
開かれた窓に
外が流れこみ
人に触れた渦が加速して吸われ
熱をうばい、いのちを呼びさます

冬は、空がひびきあい
轍に沿った霜柱を駆けている
未整地に群れ
歓声をあげる
キャッチボールを
鮮やかな結晶に瞳を張りめぐらせ
音すら、しばらく抱きとめる

冬は、しかし失われ
都会の屋根に蛍光する繁栄の影に
追われたものの常で、北へ
けものの持つ良い
しかし、孤独な骨の
透明のように
果たせない約束となっても
未来に届きたい
それは
黒い枝に留まった鳥が
やがての花を迷わず選ぶことではな
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