「あいつについて」/広川 孝治
心の中で舌を出していたのを俺はよく知っている
自分が勝利者だと優越感に浸ってやがったんだ
リョウはやがてそいつから離れていった
俺はそいつの優しさも
そいつのいやらしさも
何もかもよく知っている
そいつが誇り高いふりをしながら
じつは上目遣いで世の中をうかがっていることも
ピアノも水泳も書道もフットサルもほとんど長続きしなかったことも
親の財布からお金をちょろまかしてゲーセンで遊んでいたことも
俺は何もかもよぉく知っているんだ
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