ふゆのさかな・2/銀猫
 

不愉快な覚醒が
北寄りの強い風で更に増して
両手の無意識がコートのポケットを探す
ひんやりとした裏地や
捨て忘れた入場券に
指先は触れているが
今はそれより風から逃れたい


月曜日がいつから巡っているのか、とか
少し白い思考に身を委ねてみると
水槽に戸惑うちいさなさかなになる

人垣の水草を掻き分けながら
濁りかけた水を押しやるといって
透明は待っておらず
僅かに流れのある場所に出るだけだ

さかなは清流を知らない

むしろ
強い流れと
まるくなって押し寄せる空気を
怖いと思う
さかなはちいさな体躯のままで
ちいさな生を終えるだろう

透明は遠く
さかなを知らない
清流は強く
さかなを知らない


水草が
今日も絡まりながら
揺れている




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