神聖なる詩/はじめ
 
車に乗り家路に着く
「僕には詩しか無いんだ」そう呟き 涙を流して腕でゴシゴシと拭く
実家から段ボールが届く その中には食料品と手紙が入っていた
「無理するんじゃないよ」と年老いた母親は書いていた
僕は鳴咽し 涙を手紙に滴らせ 机に向かい再び詩を書く
僕は親密な闇の中にいる その中で唯一の希望を胸の内に秘める そしてその希望を詩に託す
止めようと三拝九拝しても冴えない才能が許さない
文字の一字一字に暖かい光が灯っている
僕は笑顔になって その文字達を両手で静かに包み込む
柔らかい
僕はこの詩が絶対売れると思った
全て書き終えると長い溜め息を吐いた
明日がすぐそこまで迫っていた
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