(ある雨の日に)/草野春心
ある雨の日に
ある雨の町を歩き
ある雨の音を聞きながら
ある雨の匂いを嗅いだ
吉祥寺のサンロードとか言ったっけ
あったのは映像と音声それと自分だけで
天使は居なかった
ほっとしたような拍子抜けのような
とりあえずの了解のなかを歩いた
水を吸いすぎた絵筆で
画用紙に自分を描いていた
輪郭は内部にうもれ
内部は……僕の中の空洞に……
沈んでしまって……
理性と感情がごった煮された気分で
歩くことと記憶することは同じだと考えた
そして……この雨はなんだろう……と
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