パセリと手紙のある浮き島/hon
 
つも何か他愛ないようなことだったと思う。彼と最後に連絡を取ったのはいつだったか、かなり以前のことのようである。しかし、なお疑問はのこる。ディーディーは本当に死んだのだろうか。こんな無作為な風に吹き流されてきたような紙切れひとつで、ひとの生き死にが決定するものだろうか。そのうえ宛先も消印もないただ白い封筒なのである。ぼくがこの手紙を読まないことだって、あり得た話だ。
 実際ぼくには、何が生きていて何が死んでいるのやら、あまりよく分かりはしない、いまや――とりわけ、日が落ちて『浮き島』が夜の闇に覆われる時分には。窓の外はそれから急速に暗くなり、さらに濃密に深まる闇の頭上で、星たちが明瞭にぎらぎらと輝きすぎていて、昼間とはまた違った意味で危険な眺めへと変貌する。昼だろうと夜だろうと、こんな部屋から外は見つめすぎない方が良い。ぼくは窓を閉じた。それからカーテンを。
 そんなわけだから彼が死んだというなら、その日はよく晴れた日だったに相違ない。晴れた日にディーディーは死んだのだ。
 さっきからぼくはパセリを見ている。(了)
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