悲しみの調律師/明星 梟
風に乗って流れ聞こえるピアノの音
集中力が途切れて
ふらふらピアノの前へ
「お前は俺を惹きつける何かがあるのかい?」
そっとピアニッシシモで呟く
破れたスリッパから
グロテスクな肉片が這い出てきて
じっと俺を見つめていた
俺は乱れたでたらめな旋律で
薄汚れた灰色の大気を振動させる
アレグロでこみ上げる吐き気はきっと
自己嫌悪の象徴なんだろう
スタッカートで繰り広げられる
馬鹿馬鹿しい会話に怯むな
お前にはお前の意味があるだろう?
タイで同じような話を繰り返すよりも
スラーで少しずつ会話を繰り広げて
テヌートとアクセントで己を主張しろよ
フ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)