やかん/
湾鶴
干し竿に捉まったやかんが
風をすいこんで
ふるりゆれ
蓋はいつの頃にも
なかったようす
雲が影って
うつむき
口をぶらぶらしているやかんには
少し水が入っていて
のぞく顔を映し
その底は磨いてもとれぬ焦げと錆の線が
スケートリンクのように渦巻いていた
日が陰ってきた
風をはらんでエプロンは
やわらかにはためき
やかんへエールを送った
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