夢の経験/前田ふむふむ
遥かに遠くに満ちてゆく、夢のような泡立ち。
その滑らかな円を割って、
弱くともる炎。
最後のひかりが、睡眠薬のなかに溶けてゆく。
みどりで敷きつめられた甘い草原。
潤沢なみずをたくわえて、
豊かさを誇示する地肌にひろがる、
セイタカアワタチソウの群生のなかを、
恋人を失くして、自嘲するピエロのように踊る、
わたしの幻影が、かなしく背を向けて、
うな垂れる。
夕照がしみる水槽のような寝室で、
空白のこころを埋めるものを、とりとめもなく捜す。
茫々とした夢の荒野から、
掌で、溢れだす記憶のみずを汲み上げて、
そこから、零れていく稜線を眺めると、
わたしは、予約の
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