*光がもどってこない*/かおる
陽射しが緩む毎日に
空が
ひとつ
忘れ物をしました
宇宙まで透き通る空は
あおい色を
キラキラ煌めかせて
風に総天然色の花を
ふりまいていても
コートの襟を
かき寄せる手は
まだもどってこない光を
懐かしむ
トンネルを抜けなくちゃ
冬の光そのものに
包まれる事は
もうできないのだろうか
次郎の屋根に降り積り
太郎の屋根に降り積り
大地を浄化するような
冷たい白い光
全ての音を吸収して
静かに降りゆく光
この街に
勘太郎が大手を振って
渡っていった痕跡は
まだない
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