井の中の蛙、大海を知る/1486 106
 
海の広さを初めて知った
自分の小ささを初めて知った
築き上げてきた世界のイメージが
音を立てて崩れ去った

蛙は風のない浜辺に佇み
この海を越えていこうと決めた

岸から随分離れたけれど
水平線は彼方まで続いている
甘く見ていた蛙の自信を
容赦なく波が砕いていく

それでも一度決めた事だから
泣き言は吐かず進んでいくさ

なかなか進めない蛙の頭上を
カモメが優雅に飛び越えていく
翼があれば便利だろうけど
特に欲しいとは思わない

泳いでいける自分の力で
越えていける自分の限界を

イルカに憧れた事もあった
クジラに憧れた事もあった
だけどなりたいとは思わない
蛙として生まれたからには
蛙として生きていくんだ

人間だってそうだろう?

背中の後ろで夕陽が沈んだ
宵闇が孤独を浮き彫りにする
でも引き返すわけにはいかないから
昇る朝日を追いかけていく

それが一度決めた事だから
力尽きるまでもがいてやるさ
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