夜の底/草野春心
 


  灯りを消した部屋で
  そのはじっこのベッドの上で
  ぼくは夜の底へ沈殿してゆく
  そしたらいつか夜の一部になれるかしら



  夜は全てを隠すから
  ぼくは夜の底で容易く完成されるだろう
  ……そう思ったら今度は眠るのが怖くなった



  どうやら夜にはなれそうにないと気づいて
  仕方なく二、三の思いを灯し
  朝への道を夢想してはみたが
  それは昨日の朝と瓜二つだった
  ぼくは拍子抜けがした

   *

  目が覚めたら朝だった
  畢竟すべてが嘘なんだなとため息ついて頭を掻いた
  幾つか夢を見た気もするがすっかり忘れてしまっていた


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