雨になる前に走り出してしまう/
岡部淳太郎
こませて、私は雨の
冷たさを憶える。いつ
でもそれを、思い出せ
るように。きっと私の
はじめての雨の記憶は、
そうとおくないところ
に、あの空のような、
手のとどきそうなとこ
ろに、あるのだろう。
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雨になる前に、走り出
してしまう。そのここ
ろを、しずめて。濡れ
ながら、傘を捨てる。
(二〇〇七年二月)
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