名前/湾鶴
 
少し窓を開けた
テトリスのように積まれながら
ほこりひとつたっていない ビル
歩道には街灯がたたずみ
影に埋もれていた 夜

 最初に僕の名前をつけた人のことは
 よく覚えている
 
情景は流されてきたが
それに釘を打てず
いつだったのかは わからない
ふいに釘のあたまを見つけても
在ることだけで すっかり安心して
豆腐の中へとずんずん沈んでしまう

 僕の名前は たくさんあって
 僕を呼ぶ人は たくさんあって
 たくさん たくさん 変わってきたから
 もう
 いろんな豆腐が流れてきて
 最初につけられた名前も思い出せない
 


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