タラコ・ディスティニー/ブルース瀬戸内
 
に閉口する。
運命とはかくも偉大なものなのか。
それでも私は抗いたいと思う。
私は運命を切り拓きたい。
そうすることでしか、私は私たりえないのだ。


ふいに冷蔵庫が開けられる。
まばゆい光が私を照射する。
緊張の一瞬だ。
運命を展開できるのは誰なのか。
私に人間の手が伸びる。
私だ。
私は運命を展開できる。
私は体系の外側に脱出した。
今こそ運命に抗えるチャンスだ。


私はそのための策を練る。
しかし時間は私を待てないようだ。
私はパスタと絡められる。
私のすべてはパスタと一蓮托生だ。
これが運命か。
私はパスタとの離脱を試みるがなす術がない。
これが運命か。人間になぞらえて言えば、これが人生か。
これを受け入れろと、そう思ったところで目が覚める。
私は夢を見ていた。私は無事だ。
まだ冷蔵庫の中にいる。


ふいに冷蔵庫が開く。
人間の手が卵に伸びる。
卵が喜びを隠せない顔で出ていく。

私はほくそ笑む。

冷蔵庫がブイイーンとあくびをした。
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