月蝕/ハエフ
 
ただ
ただひろいだけの夜空を充血する程に
まなこを凝らしたら
はしっこの辺りに裂け目がうまれ
乳白色の貴方を呼んだのは紛れもなく私です

その仄かに薫る鎖骨は
芳しき母のようであり
ミルクのようでもあり
月長石を撫でてしまいたくなる欲望
貴方が血走って見えるのは私の気のせいでしょうか
勘違いでしょうか

潮騒が後退りをためらう海岸線で
まばゆく照らされた乳白色は心なしか青白く見え静かな寝息をたてています

私も添い寝したいのですが
なにせ寒さが身にしみるほど空気はうすく
不規則な口笛ばかりが貴方の眠りを妨げてしまいそうで
怖いのです

夕焼けが帰るべき後始
[次のページ]
戻る   Point(18)