真夜中の散歩(2003)/
 
替えると惑星の横顔のド・アップ
ニュース・キャスターの声に耳を傾けると
何万年ぶりかに火星が地球に大接近してきているらしかった
降り続いていた雨は 夜になるときれいに上がっていた
いまどこかで降っているその雨も
やがて止んでしまうということの確かさ
その雨には もう二度とめぐり会えないということの確かさ
と悲しさ


いつもと同じように寝静まった団地の中をくぐり抜けて
いつものように縺れた電線の間からのぞく夜空をチラッと見上げ
て 再び首を下げるモーションに入る迄の2、3秒

「あ」

はじめて気がついてしまった
間接照明で明るんだ空に、ぼんやり浮かんでるいつもの明るい星
危うく攣りそうになり下げる首
おれ 毎日火星を見てた

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