ぼくの玉ネギ/ぽえむ君
十年以上も大切に飼っていた玉ネギが
逃げてしまった
「探しています」を電柱や壁に貼り付けたが
反応は全くない
街を隈なく歩いたけれど
それらしいものもなく
みんなはそれぞれの玉ネギを幸せそうに
連れている
必死になって
涙をこらえて
探し続けた
ぼくの玉ネギ
もう思い出だけの存在なのか
冷たい風が心を刺す
あきらめて家に帰ることにした
ドアを開けると
そこにはいつものように
ぼくの玉ネギが何もなかったかのように
すやすやと寝ていた
顔を近づけると
自然と涙がこぼれた
今夜は温かいシチューを食べよう
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